10-22-2010, 09:52 AM
男は上着のポケットから携帯電話を取り出し、電話をか けた。
玲奈の知らない言葉で数十秒の会話を終えると、無理に 微笑んで言った。
「もう大丈夫です。20分程で仲間のヘリが来ます。水 でも飲みましょう。」
中で人がひとり死んでいる廃車となったジープへ戻り、 後部座席からミネラルウオーターを2本取り出してきた 。1本を玲奈に渡すと、自分のを一気に飲み干した。
見渡す限りの灼熱の砂漠の中、時間は過ぎていかなかっ た。そこは音のない世界でもあった。手に取ったボトル の冷たさだけが、玲奈にかすかな明日への希望を抱かせ た。
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